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試乗レポートinもてぎ

乗れば、きっと好きになるはず。

小沢 コージ

 大げさに言えば、スマートは一種の宗教だと思っています。メカニズム一つ一つを見れば、まだまだ未完成に感じられる部分もありながら、全く新しい世界を作り出している。その新しさに賛同した人が、スマートの信者になるといった感じではないでしょうか。教義の本質がどこにあるかと言えばやはり前代未聞の2人ボディに尽きる。もちろん、それにより全人類が直視すべき難題、つまり渋滞問題、環境問題を解決するというもの。その思想が見事、全長2.5メートルのフォーツーに表現されていた。その意味で、フォーフォーには裏切られたと感じた人が多かったのでは(笑)。「なんで、5人乗りなの?」と。でも、フォーフォーに試乗してみて、なかなかスマートらしく仕上がっているので安心しました(笑)。

 まず、素材感の出し方がうまいと思う。料理にたとえるなら、スマートは生のサラダ。アレンジされすぎてアクがなくてスーッと食べられる、でも個性が薄いという国産車に比べて、スマートには乗る楽しみやメカを操る楽しさといった生の楽しさがある。また、文房具のようなちょっとオモチャっぽい雰囲気の出し方などは、さすがといった感じです。

 走ってみて感じたのは、ステアリングは軽いが、独特の剛性感があるということ。フォーツーは振動などがダイレクトすぎて、ちょっとキックバックが多いなと感じる部分もあったが、フォーフォーではそういったところをきちんと抑えてあって、乗り心地がずいぶんマイルドになっている。段差を飛び越える時の横の振動も、フォーフォーにはありませんね。ステアリングホイールの重さもフォーツーでは気になっていた部分ですが、フォーフォーでは、それもなくなりました。スマート教の教義を残しつつ、ほどよくトゲを取ってくれたというところが全体的な印象です。

 フォーツーから一気にフォーフォーへという流れはないと思いますが、フォーツーに5年ぐらい乗って、その間に子どもが生まれたり、生活が変化したりして、2人乗りだとツラいというシーンが出てくる。その時にフォーフォーへの乗り換えを考えるという流れになるのでは。5人乗りになったからといって、スマート教信者としては、それほど落胆することはないと思います。乗れば、きっと好きになるはず。食わず嫌いだけはやめてほしいですね。

小沢 コージ
小沢 コージ(おざわ こうじ)
 
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